其の五十 「脳みそ」

ヨーロッパをバックパックを担いで貧乏旅行をしていた若き日のこと。
1ヶ月余りの旅行中、1度くらいレストランで高級料理とやらを食してみようと、意を決して高級そうな?レストランに入った。
メニューを見てもわからないので、一番高いものを注文した。
待つことしばし。どんな料理が出てくるのだろう、と期待に胸が高まる。
何せそれまではスーパーでパンやハムや缶詰を買って食べたり、店で買うのは駅のスタンドで立ち飲みビールとソーセージくらいだったのだ。
さてこの店一番の高級料理が運ばれてきた。
皿の上の料理を見た。
え?何?これ?白っぽくて半円でしわのような線が・・もしかして脳みそ?
そう、それはどうみても脳みそ以外の何者でもなかった。
大きさからみて子牛か羊だろうか。
付け合せの野菜などは一切なし。皿の上に脳みそだけが乗っていた。ソースもかかっていない。
生?まさかね。ゆでているのか蒸しているのか・・。
とにかく今度の旅行のたった一度のレストランでの食事のメニューなのだ。食べるしかない!!
一口食べる。とろりとして淡白で、不味くはない。でもこれだけをパクパク食べるようなものでもない。いわゆる珍味の類である。
半分以上は食べた。でも全部は食べずに席を立った。