其の五十三 「モロッコの旅」

ロッコ北アフリカの西の端に位置している。
海岸沿いは海風もあり過ごしやすいが東部のアトラス山脈を越えると、そこは灼熱のサハラ砂漠である。
イスラム教の国なので、年に1回ラマダンという断食月があり、この期間は太陽が昇っている間、飲食をしない。
ただし赤ん坊や小さな子供は対象外。また異教徒の外国人も対象外。ただしレストランなどは外国人向け以外は日中閉まっている。
イスラム暦なので、毎年ラマダンの時期が異なる。
おっさんが訪れたのはちょうど真夏のラマダンの時期であった。
バックパッカーの貧乏旅行者に外国人向けの高級レストランは無縁であるため、1日の食事とすべくパンを買うためにパン屋へ。
黒パンがあるなあ、これにしようか、と手を伸ばすと、なんと色が白っぽい薄茶色に変わった。
全体にハエがたかって黒く見えていたのだ。
で、そのとなりのパンを買った。
となりのパンもおっさんが見る前には同じように黒いパンであったとは思うが、少なくとも目の前で黒かったパンを買う気にはならなかったし、また1日食事なしで過ごすのも嫌だったのだ。
気休めにもならないが、食べる前に手で表面を拭いて食べた。味は・・固めの普通のパンだった。
移動手段はバスなのだが、窓を閉め切って走る。窓を開けると熱風が入ってきて危険だからだ。
バスの中は蒸し風呂状態。買ったばかりの冷えた水も30分もバスに乗っていると温かいお湯になる。
宿についてジーンズを洗って、ろくに絞りもせずに外にかけて、3時間ほど昼寝をすると、ジーンズがパリパリに乾いていた。
昼間歩いているのは観光客と犬だけ。犬も暑さでふらふらだ。現地の人は木陰で昼寝をしている。
夜は急速に気温が下がり、ふけてくると過ごしやすくなる。星空はこの世のものとは思えないほど綺麗だ。空中星だらけ。
こんな夜空を見ればおっさんだって千夜一夜物語アラビアンナイト物語)くらい作れるわ、と思うほどだ。
さて、太陽が沈むと賑やかになる。
空腹を満たすために皆がレストランで食事をとる。
マラケシュの広場だと大道芸人も集まり、大賑わいだ。
食事のメニューもたくさんだが、羊肉の串焼きのケバブやモロッコ料理のクスクスやタジンが旨い。
海岸沿いの町、エッサウィラでは焼き魚も良い。
1週間ほどモロッコを旅したが、げっそりとやせた。
実質1日1食で1日中サウナに入っていたような状況だったのだから、やせて当たり前だ。
ダイエットをしたい人には真夏のラマダンのモロッコはベストコンディションといえる。