其の二十七 「てんぷら」

前話で関東と関西を出したので、よく比較されるてんぷらについて話してみようと思う。
関東はごま油で揚げるので、衣の色が濃く、ごま油の香りが香ばしい。そしてつゆの味は濃い。
関西は綿実油などで揚げるので、衣の色が薄く、油自体の香りが控えめである。つゆの味も薄め出し、つゆではなく塩をつけることもある。
好みの差はあるだろうが、おっさんはやはり関西派だ。
てんぷらの良さは素材の味を衣で包んでのがさないところだと思う。
それには油やたれが香りや味を主張してもらっては困る。
もちろん油やたれの味や香りも大切なのだが、それはあくまで素材の持ち味を引き出す「味」を出してもらわないといけない。
様々な技法を用いて素材の持っている味を十全に引き出すのが、日本料理の真髄だと思う。
てんぷらもその一つの技法である。
そういった点で、関西のてんぷらの方が点数が高くなるのである。
てんぷらで思い出すのは与太呂本店だ。仕上がりの色がきれいで、軽く、上品な油。角のないまろなかな味の塩。素材の味を生かしきるてんぷらだったなあ。

ついでに天丼だが、関東は具をつゆにどっぷりとつけて供するが、関西はつゆをかけて供する。
つゆにどっぷりとつけてしまうと、てんぷらの持つ大切な魅力である歯ざわりが失われてしまう点で、やはりおっさんは関西に軍配を上げる。
料理の味とは、当然歯ざわりや口当たりも点数に入るのである。