其の三十一 「鯨」

ながす鯨の尾の身の刺身は刺身の中の最高峰、とある本の文中にあった。
もうずいぶん前に難波の西玉水で食べた「それ」は確かに納得の味だった。
鯨といえば、子供の頃のおでんには「ころ」という鯨の皮が入っていて、結構美味だったのを思い出す。
そして道頓堀のたこ梅の「さえずり」。
これは絶品だったなあ。
昨夜久しぶりに「さえずり」を食べたが、おでんではなく、酢味噌和えでコースの中の一品もので出た。
土佐料理の「司」でのこと。
司といえば鰹のたたきと皿鉢料理のイメージだが、鯨料理も出すようだ。
鯨は美味しい食べ物なのだが、欧米の自己中心的な価値観の押し付けで、最近は品薄で高価になってしまった。
人間が食べるものは牛や豚のような動物でも米や麦のような植物も命あるものだ。
人はそれを食べなければ命を繋げない。それは人に限らず動物全般に言えることだ。
それなのに、自分達の習慣の中で食べないものを食べるのは野蛮だ、と批判する。
その考えこそ、自己中心的で野蛮な考えだ。